飛耳長目

はじめに

Web知識の整理と共有

Webサイトを作るときに、HTMLをはじめCSSやJavascript/PHP、ページを飾る素材、色コードなど様々な知識が必要になる。多くのオープンソース開発のアプリケーションも使っているので、それぞれの設置手順、管理画面やDBの設定、カストマイズ手順と内容、不具合と対策・・・などもある。そうした知識が多岐にわたるため記憶できないし、覚えてもすぐ忘れてしまう。それでWeb学習手帳を作って、学んだ手順と雛形を残しておき、必要なときに転写・編集することが多い。

ところが、雛形が多くなると求めている雛形がどこにあるかを探すのに時間がかかってしまう。雛形だけでなく、アプリケーションをカストマイズしたときの情報も忘れてしまい、アップグレードするたびに思い出すのに苦労する。思い出せないことについては、各アプリケーションの開発・配布元のサイト(ほとんどが英語)を調べたり、GoogleやYahooで検索したりすることになり余分な時間をとられてしまう。

Web制作に必要な知識の体系化、アプリケーションやスクリプト、素材などのツールを整理し、いつでもすぐに使えるようにしておくことが大切である。そのためのツールをたくさん試してきたが、現在はMT3, MT4、Wordpress、GoogleApps/Sites、OpenPNE、Drupalなどを日常的に使っている。

オープンソースソフトウェア

情報整理・共有のためのツールはたくさんある。私が使っているのはほとんどが無料のオープンソース開発ソフトウェアである。典型的なのがLinux、Apache、MySQL、PHP/Perl/Pyson(総称してLAMP)だが、これらはWebサービス基盤のソフトであり、Webホスティング企業がサポートしている。自分のハード/OS/ネットワーク環境(Windowsラップトップでも良い)に設置することも可能だが、個人での運営には無理がある。

私が使っているオープンソースソフトウェアはWebサーバで動くアプリケーションのことである。Xoops, Movable Type, Wordpress, OpenPNE, Drupalなどだ。富士通Nifty、ソニーSo-Net、ヤフーや楽天といった企業も採用しているアプリケーションソフトでもある。経営の重要な7つの視点のひとつが個人と企業の能力向上だが、かつては多くの専門家と組織で何ヶ月、何年も取り組まなければならなかったことが、一個人が数日でとりあえず運営できるものを構築することができる時代だ。

自分が所有するドメインとそのドメインをホストするWebサーバがあれば、ほとんどのオープンソース開発のアプリケーション(OSAと略称)を半日でインストールして動かすことができる。Linuxで標準装備されてパッケージリポジトリに類似したツールが海外のホスティングサーバで提供されるようになり、これを使えば3分で設置完了し、即使い始めることができる。それがなくても開発元から最新のOSAをダウンロード/解凍、設置環境(データベース、メールサーバなど)の設定、FTPでアップロード、必要に応じてセットアップスクリプト実行・・・普通は1時間以内で完了する。Wordpressはソースをアップロードすれば3分ですべてを自動的にセットアップしてくれる。

一番てこずるのが日本が中心になって開発されているOSA(日本版XoopsとかOpenPNEなど)だ。日本語しかないし、コード系も日本だけのもの、インストールや動作環境のドキュメントが貧弱、サポートコミュニティの層が薄い・・・といった課題があるからだ。日本人が世界的に活躍する時代を祈っている。

WEB制作を始めた理由

社内の企画会議でも、業界関係者相手の講演や研修でも、参加者たちに口頭で話をしても理解してもらうのは至難の技である。また、自分が使っていないと、話す内容は耳学問の域 をでない。自信を持って話せない、聞いている人たちも眉唾な話だと思うかもしれない。だから、自分が実践したほうが良い。自ら行動することによって部下も ついてくる。それがシリコンバレーカルチャのひとつである。〔例〕設計ドキュメント作成、サンフランシスコ大地震予測

日米経営幹部の情報格差

某総研に移籍したとき、日米の経営幹部たちのデジタルデバイド(情報格差)を意識せざるを得なかった。「経営とITは車の両輪」といいながら、自らITを活用する経営幹部がほとんどいない日本の実態に驚いた。経営品質の向上や事業構造の転換を企画したときに、経営支援ツールとしてブログやCMSの導入を提案した。企画書を作り、話しただけでは説得が難しい。やって見せることが実現への近道だと思った。それがWeb制作を始めるきっかけになった。

経営者/上司の思いを情報発信

某社で経営品質向上への取り組みが始まったとき、経営幹部たるものは、経営方針、事業方針、計画と結果、改善の方針・内容などをことあるごとに組織メンバーに発信しなければいけない。そのツールとしてブログを提案したが、ブログという言葉も知らない人がほとんどだった。2004年のことだったが、アメリカの経営幹部たちにとっては必須ツールだった。ベンチャー起業家だけでなく、IBM、HPなど大企業の経営幹部も実践していたことである。もちろんLinkedinというビジネス業界向けのSNSも使っていた。

日本企業(一部上場の大企業の例)の典型的な情報発信と共有の手段は「定例会議」である。社内ホームページや社内メールという手段も使うが、みんなが一同に会し、顔を見て伝えるのが一番だと思っている幹部が多い。毎週最低一回、2~3時間も拘束されるのはたまったものではない。メールやWebで周知すればいいようなことばかりだと時間がもったいない。

〔閑話休題〕ある本部長会議では事業部長クラス50人が集まった。資料は各事業部の損益決算報告書(A3で50枚)。延々と説明が続く。四半期に一回でいいはずだ。アメリカでは、三ヶ月も待たないで報告、チェックするというのは事業部長が責任を持たず信用されていないということになる。

Webで情報発信するツールとして、当時富士通Niftyが採用したMovable Typeを個人的にライセンスした。Webサーバは当時最も安かったlolipop200MBをレンタルした。新しくドメインを個人で取得し、home.elmstadt.comにブログ(現在home.elmblog.com)を書きはじめた。Yahoo、Nifty、楽天などでの私のブログやGeocitiesホームページを見せるのでは、社内導入の契機にはならないからだった。

〔閑話休題〕このツールを社内導入するときの最初の抵抗勢力はIT部門/システムアドミニストレータ(シスアド)だ。これはアメリカでも「シスアド文化」があり、アメリカ的な企業を超えた「労働組合」のようなものだった。IT活用・運営のプロたちで世界とつながっていた。経営者の目の届かない世界で、余人の理解できない分野だといって放置することは大変危険である。企業機密情報の保護の根幹にかかわる職務だから、その職務を理解し指導監督するのが経営幹部の義務である。その意識が日本企業では薄い。だから個人情報漏えい事件が後を絶たないのだろう。シスアドの責任ではなく経営者の責任である。

鮮度の高い情報を社外に発信

某社では、企業の顔であるホームページも手作りで、手直しや運営・保守を外注していた。これも社内にMTなどITツールがあれば効果的・効率的に運営できる。しかも運営コストを劇的に下げられる。ブログツールでも可能だが、複数の投稿者(各部門の代表)が鮮度の高い情報を社外に発信できるツールとしてはCMSのほうが機能的で利便性が良い。

もちろんツールの前に、企業イメージにあったルック&フィール、適切なコンテンツ、分かりやすく使いやすいデザインが大事で、これはマーケティングのプロに任せたほうが良い。継続して鮮度の高いコンテンツを社内で書いて公開するための仕組みを実現するCMSが求められた。広告・宣伝・マーケティングを専門とする人たちは実に見事なWebをデザインしてくれる。しかし、それは一過性で継続していくと運営コストが高くなっていく。それがベンダー側の目論見である場合もある。

2004年当時の日本では、オープンソースのCMSとしてXOOPSが人気だった。かなりの日本人が開発に参加していたからだ。結論から言うと、このXOOPSを企業ホームページ作成・運営のインフラツールに採用した。もちろんカストマイズが必須だった。個人で使うことも容易だったので、ベンダー提案の真偽を判断するために自らのドメインに設置して使ってみた。それがelmstadt.comである。もちろん個人で使うのには重過ぎるし、組織で運営しないとCMSの意味がない。評価しただけでそれが終わった後は放置したままになっている。

座学+行動

読み書き算数(そろばん)は小学生が学ぶ基本だが、図画工作、理科の実験、裁縫、課外授業がなくては、五感を使った学習体験ができない。座学だけでなく行動して学ぶことが大切である。

社会人になっても生涯にわたって、読み書き算数を実践するだけでなく、行動し続けなければならない。ITを知るための近道は「使う」ことである。経営幹部自らが使って理解し、その効用を伝えることなしに人材の育成はできない。

 

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